久しぶりの更新となりますが、今回も天文の話題、昨年末見られた木星と土星の大接近の記録を掲載しましょう。

 夜空を彩る星々には大きく2種類あります。恒星と惑星です。文字通り恒星は常に決まった位置にあって星座を形作る星々です。夜空の星の大部分は恒星です。一方、数は少ないですが明るく、位置を変幻自在に変える星が惑星です。文字通り惑える星です。古今東西、惑星の存在は人々の注目を引きました。水星、金星、火星、木星、土星の5つがそれにあたります。例えば、「明けの明星」や「宵の明星」などと呼ばれるのは金星で、時に明け方の東の空、時に宵の西空に明るく輝きます。
 恒星と惑星の違いはなにかというとその距離です。恒星は地球からは光の速さでも4年以上、数万年かかる遠いものもあります。一方、惑星は地球と同じく太陽(太陽も一恒星です)の周りをまわっている太陽系の一員で、恒星に比べれば圧倒的に近くに存在します。光の速さではせいぜい1時間程度。この距離の違いが見かけ上の動きの違いに表れてくるわけです。また恒星は太陽と同じくそれ自身核融合により光を放つ存在ですが、惑星は太陽の光を反射して光っているに過ぎない存在です。

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 この図はWikipediaから借用した太陽系の図です。距離は恣意的ですが各惑星の大きさ、並び順は実態に即しています。左から三番目の地球(Earth)に比べて木星(Jupitar)、土星(Saturn)の大きさがわかると思います。なお土星の右、天王星(Uranus)と海王星(Neptune)は遠すぎて肉眼で見るのは困難です。

 さて前置きが長くなりましたが昨年木星と土星が大接近しました。といっても物理的に接近するわけはなく、地球からの見かけ上近づいて見えたということです。木星と土星は地球より外側の軌道を回る巨大惑星でとても明るく見えます。その2つの明るい星が肉眼でも区別できないくらいに接近したわけです。太陽系の惑星はどれもほぼ同一平面状で周回しているので、接近して見えること自体は珍しくないのですが、今回ほどの大接近は400年ぶりとのことで天文ファンには必見のイベントとなりました。
 最接近は12月20日頃でしたが、日を追って近づいていく様子を見てみましょう。

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 この写真は以前も掲載しましたが、昨年6月23日に撮影した夏の天の川の写真です。矢印に示したようにこの時期すでに木星と土星が並んでいます。木星はほかのどの星よりも明るく輝いています。この後も2惑星は徐々に近づいていきました。

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 最接近した12月21日前後の2惑星の日毎の位置を追ってみました。明るい方が木星となります。自作の5㎝アクロマート、焦点距離600㎜望遠鏡の直焦点撮影したものをさらにトリミングで拡大しています。肉眼では区別するのが困難なほどの近さです。2惑星とも大きさを持った存在として写っています。左上から土星が近づいてきて木星の右上をかすめて過ぎていきました。

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 最接近時12月21日の写真をさらに拡大してみました。土星の特徴的な輪が写っています。木星の表面には縞模様が見えるはずですが、露出や地平線近くで大気の状態も悪くちょっと難しい感じです。さらに木星の周りにはガリレオ衛星と呼ばれる4つの明るい衛星が眼視では見えているのですが、写真では露出の関係で消えてしまっていて残念です。なお望遠鏡なし、肉眼でもぎりぎり分離して見えました。

 今回の天文ショーは当地では天気にも恵まれ存分に楽しむことが出来ました。確率的な出来事で天文学的に意味がある現象ではありませんが、かつて誰も見たことの無い絵が見られたということで満足です。ちなみに今後これほど接近するのは60年先とのことなので最初で最後の機会となりました。