今回はいよいよ最終型ポタ赤の紹介です。

 いきなり完成したポタ赤の全体像です。
P1020840_1
 極軸のデザインはポータブル赤道儀を作る(2)で紹介したものと同じ形式です。すなわち2枚の板からなり、上の回転板を2個のスラストベアリングで挟むというものです。また微動装置のメカニズムも同様、円弧に沿わせた紐で制御するという形式です。前回のものは縦型でしたが、今回のものは横に伸びた形となっています。
 写真で、本体左のボルトの頭が極軸に当たるもの。その右脇にカメラを乗せる雲台を固定する1/4インチのボルトが出ています。右端の白い部分が極軸を中心とする円弧となっています。
 本体は1.3㎜厚の合板製。本体重量は744gです。

 以下、詳細に各部を紹介します。

P1030052
 側面から見たところ。
 下の板には傾斜をつけた丸棒を張り付けてあり、三脚に直接ねじ込めるよう1/4インチナットが埋め込んであります。極軸のセッティングは三脚の開き具合、脚長の調節などで行います。雲台を挟んだ方がより自由度が上がりますが堅牢化、軽量化を狙いました。ちなみにこの丸棒は瓜生山で拾ってきたアラカシ材。固く重く、加工が大変でした。上の回転板にも下の丸棒の片割れを接着しその先にカメラを乗せる自由雲台を乗せます。これで雲台はほぼ水平になり、かつ本体上部に飛び出して構図を決めやすくなります。
 2枚の板を貫いている極軸に当たるボルトが見えます。上の可動板は2つのスラストベアリングに挟まれています。このボルトは 10mm 、ナットを指できつく締め上げたくらいで、緩むこともなくガタもなく滑らかな回転が得られます。

P1030014
 極軸のボルト、ナット、スラストベアリングなどが直接木部の本体と接する部分は大きめに切ったプラスティック板(CD盤)をワッシャ代わりに挟んでいます。斜めに力がかかるので木部に金属の部品が食い込むことを防ぎます。
 極軸左に開けた大きな穴(24.5㎜)は極軸セッティングのための極望を嵌める穴となります。

P1020845_1
 駆動部分です。
 基本的なアイデアは(2)で紹介した紐で回転を制御する方式です。回転板の先端を極軸を中心とする円弧に加工して、そこに紐を添わせます。滑りをよくするため、また微妙な半径を調節するために塩ビの板を接着してあります。塩ビ板は塩ビパイプを熱で開きにしたものです。アイロンやドライヤーで熱すると自由に加工出来ます。この円弧の滑らかさ、半径は精度に効いてきますのでヤスリで丁寧に仕上げます。円弧の先端には0,25度刻みの目盛りをプリントしたものを張り付けてあります。1分間で1メモリずつ動いていけば正確に駆動できていることになります。円弧は30度ほど。すなわち2時間弱の追尾が可能です。
 前回紹介したポタ赤は紐を手動のネジの回転で送り出すというものでした。今回はこの紐の送り出しをキッチンタイマーから取り出した調速機に置き換え、自動運転化しました。ごらんのように紐の先は調速機の軸に巻き付いています。

P1020844_1
 調速機は下の板にネジで固定してあります。調速機の下には何枚かのプラスティック板(青色)を挟んで高さを調節しています。調速機の出力軸には直径 18㎜ の塩ビのパイプが取り付けます。軸には本来のキッチンタイマーの筐体がはまっていました。この筐体を塩ビパイプの内径にあうよう切り取り、パイプを差し込み固定しています。パイプが偏心しないよう注意します。さらにパイプの胴根元にネジ穴を開けて小ビスをねじ込み調速機の金属の軸に固定します。このビス頭には紐を掛け、紐からの力を軸に伝える役割を果たします。
 このパイプ軸には力がかかり、かつ追尾精度にも効いてくるので精密に注意深く加工します。最終的にはパイプと調速機の軸、小ビスはエポキシ接着剤でがちがちに固定してしまいました。

 紐が本体の円弧の断面から外れないよう塩ビ板の端に穴を開けて紐を通します。紐の先端は小さな輪を作りビス頭に掛けられるようにします。
 紐はこの装置の要であり重要です。求められる性質は、十分な強度、しなやかさ、伸縮性の無さ、表面形状が滑らかで滑りが良いこと、均一である程度の細さ、そして真円の断面形状で変形がないこと、等々が考えられます。あれこれ試してホームセンターで入手したポリエステルの太さ1.2㎜のより糸に落ち着きました。が、よりよい紐があれば変更したいと思います。

P1020853_1
 この写真でパイプと小ビス、調速機との接着状態が確認できるでしょうか。

 前回紹介したキッチンタイマー由来の調速機のメカニズムを理解できれば、このポタ赤の原理も理解いただけると思います。調速機から出ている軸は約64分で一回りします。しかし調速機が動くには外部からの力が必要です。キッチンタイマーはゼンマイが動力となっていましたが、このポタ赤ではゼンマイは除去してあります。駆動力はカメラなどの装置全体のバランスの崩れ、すなわち重力由来の力が紐を通してもたらされます。一般に赤道儀の正確な駆動にはバランスの崩れは大敵です。バランスをとるためにウエイトが必須です。しかしこのポタ赤ではバランスの崩れを駆動力として利用しています。
 全体の形を横型にしたのも、カメラの位置を極軸の片側に設置したのも、バランスの崩れを生み出し、制御しやすいようにすためです。ゼンマイを利用していたのでは軸の一回転、すなわち約60分の駆動しか見込めませんが、本作では理論上カメラが上から下まで動く180度、つまり12時間の駆動が可能となります。実際にはバランスの崩れが変化すること、装置全体が大型化してしまうため円弧を30度、すなわち2時間程度の駆動に収めています。
 力を得て動き出した調速機は一定のリズムを刻みパイプを64分で一回転させます。すなわち64分で円周分 18 × π = 40.8mm 紐は送り出されて、カメラが載った本体は重力に従って回転します。本体は24時間で1周させれば星を追尾できます。つまり、塩ビパイプの径18㎜ × (24 × 60 / 64) = 405mm の直径の円弧(中心は極軸)となるよう本体の円弧の塩ビ板を加工することで目的が達成できます。実際には紐の太さ、巻き具合、摩擦なども効いてくるので、試運転を繰り返し、本体上に刻んだ0.25度の目盛りを読み取り、正しく動いているか確認しながら調整を行い性能を追い込んでいきました。
 調速機の軸の径をもっと細くすれば装置全体を小型化できますが、精度を維持するのにより精密な加工が必要となります。このあたりは市販の赤道儀のウォームホイールの径(歯数)と同じことです。

P1030013
 紐を本体に固定する部分です。
 有限微動であり、ときどき紐を巻きなおす必要があります。また本体との固定も任意の位置で簡便にできるようにしました。本体にL字型の穴を開け紐を通し、側面の穴と同径のダボ釘を差し込み紐を固定します。木ならではのしっくりした固定が可能です。
 本体上の丸いノブは本体を固定するストッパーです。

P1030012
 上部可動板に一つ、下の固定板に2つの穴があけてあり、同径のダボ釘をこの上下の板の穴を貫くように差し込むことで2か所で固定できます。下の穴が収納状態時のもの。上の穴は撮影時のもの。上の穴で固定して構図を決定、紐を巻き本体に固定、ストッパーを引き抜き撮影を開始します。これで2時間弱の連続運転が可能です。駆動中に任意の位置で止めるクランプ機能はありません。なくても問題ありませんが、良い方法があれば取り入れたいと思います。駆動状態でカメラの構図代えも可能ですが紐が緩まないよう注意します。ある意味紐につるされただけの不安定な状態なわけです。
 調速機への紐の巻きつけは、根元近くに、重ならないように2周程度、必要最低限にしておきます。紐の伸縮、摩擦などによる余計な誤差を減らすためです。

P1030056
 このポタ赤ではカメラを乗せた状態でのバランスが重要です。極軸から右にカメラ雲台があるので基本的にアンバランスになり駆動状態になりますが、乗せるカメラ、レンズにより、またカメラを向ける方向によりそのバランスは大きく変化します。バランスの崩れが大きすぎると調速機の軸に紐を通して大きすぎる力が加わります。この調速機の軸受けがこの赤道儀の一番のネックとなる所です。所詮100均のプラスティック製のキッチンタイマーです。あまり大きな力がかかると破損する可能性もありえます。一方、カメラが軽すぎたり、向ける方角によっては調速機が動き出す力が足りない場合もあります。こうしたバランスを調整するために写真のようなかごを取り付けました。ちなみにこれも100均で購入。本体上部断面に複数の穴を開けてあり、モーメントが変わる複数の位置にかごをかけられます。かごの中に石なり、ペットボトルなり、交換レンズなり適当なウエイトを入れて適度なバランスをとることが可能です。我ながらいいアイデアだと思いますが、かごは軽いもののかさばるのが難点です。

 以上が自作ポタ赤最終型の概要です。目標であった長時間の自動運転、それも非電化というちょっと例がないものが出来ました。100均のキッチンタイマーでこれを成し遂げ、シンプルな型にまとめ上げられたことが痛快、大いに満足しています。利用感は紐の操作など多少の段取りが必要ですが、慣れれば問題ありません。
 次回は撮影に役立つアクセサリー、このポタ赤で撮影した作例など紹介します。


ポータブル赤道儀の作り方(5)に続く