間が空いてしまいましたが、今回は昨年の5月の写真からお届けします。



 5月6日、花と新緑を求めて愛宕山を歩いてきました。

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 愛宕山の頂上には愛宕神社がありハイキングの人以外にもお参り人も多く、いつ来ても人に出会います。

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 愛宕神社参道の灯篭。
 新緑が綺麗です。このあたりには八重桜もあるのですが、さすがに時期遅れ。

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 神社にお参りするには最後にこの階段を上らなければなりません。

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 この日は手抜きをして、首なし地蔵までバイクで上がり、竜ヶ岳までぐるっと一回り。竜ヶ岳はシャクナゲが多いのですが、この年はちょっと不作、一番綺麗だったのは愛宕神社の参道のこの木でした。

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 沢沿いの道で見つけたきのこの一種、カンムリタケ。小さく見過ごしてしまいそうなものですが、そのビビッドな色に目がとまりました。湿ったところがお好みのようで、こんな水溜りに生えるのはキノコとしては珍しい。

 キノコはカビや酵母などとともに菌類に分類されます。菌類という名称は紛らわしいものです。たとえば乳酸菌や大腸菌、ひいてはばい菌と総称される多くの生物は、菌と名前がつきますが菌類とは大きく異なった生き物です。これらは通常細菌類と総称されます。
 あらゆる生物は大きく真核生物と原核生物に分けられますが、菌類は真核生物、細菌類は原核生物に属します。われわれ人を含む動物や植物も真核生物で、カビやキノコと同じ仲間です。そして動物は植物よりも菌類とより近い関係にあります。 
 細胞の成り立ちを調べてみると、真核生物は原核生物に比べて格段に複雑で、そのギャップは途方もなく大きなものです。そしてこの複雑化のおかげで多様な生物の進化が可能になりました。
 地球誕生は約45億年前。最初の生命(原核生物)は約40億年前に出現したと考えられています。つまり、生命誕生には5億年しか要していません。一方で、真核生物が誕生したのは約21億年前であり、原核生物から真核生物が表れるのに19億年も要しているのです。真核生物の出現がいかに奇跡的な出来事だったかが窺えます。真核生物は複数の異なった原核生物が共生することで生まれたと考えられていますが、詳細は不明です。真核生物の出現は生命誕生の謎とともに生物学のもっとも大きな問い一つなのです。
 先日NHKのテレビ番組だったと思うのですが、アナウンサーがカビなどの菌類と納豆を作る菌(これは納豆菌という細菌の仲間)を同じ仲間と紹介していて、世間の理解などその程度なのかと残念に思ったものです。

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 愛宕山、とりわけ裏愛宕と呼ばれる方面にはヤマツツジも多く目を楽しませてくれます。

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 一番の目当てはこのクリンソウでしたが、近年愛宕山のクリンソウは減少気味。往時の景観を知っているものには寂しいものでした。

(5月6日 愛宕山にて)



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 京都府立植物園のオオバオオヤマレンゲ。モクレン属の低木。
 近縁種のオオヤマレンゲは山地に稀に見られ、絶滅危惧種となっている地方が多いようです。紀伊半島の大峰山系の自生地が有名で、名前の由来ともなっているようです。オオバオオヤマレンゲは中国、朝鮮半島原産ですが、古く江戸時代には園芸用に出回っていたようで、オオヤマレンゲと混同されたこともあったようです。2種は雄蕊の色の濃さで明瞭に区別できます。
 白玉のような純白の丸い蕾が、うつむき加減になるさまがかわいらしく、それが膨らみ、恥ずかしげに仄かに開くさまも趣があります。つい覗き込んで見たくなります。そして花弁の奥には鮮やかな赤と黄色の蘂が色を添えていました。

(5月11日 京都府立植物園にて)



 葵祭の風景

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 京都の5月といえば葵祭が有名で観光客にも大人気です。正式には賀茂祭との名前の通り、下鴨神社、上賀茂神社という京都でも最古級の神社のお祭です。平安時代には祭といえば葵祭のことだったといいます。一番の見所は路頭の儀と呼ばれる平安装束に身を包んだ人々による行列で、京都御所~下鴨神社~上賀茂神社と行進します。
 写真は京都御苑内を行く御所車(牛車)。紅白の幕の内側は有料の観覧席。その後ろから行列を見ようと皆さん苦労しています。

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 葵祭のヒロインが斎王代と呼ばれる女人。写真の腰輿(およよ)と呼ばれる輿に乗った十二単に身を包んだ女性です。
 元は皇室から使わされた内親王が勤めていたとのことですが、現在は一般人から選ばれます。毎年斎王代が決定するとニュースになります。一般人とはいえ、そこはそれ。京都にゆかりがあり、高額の費用を負担できる老舗、資産家の子女などが推薦により決まるといいます。

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 京都御苑や下鴨神社など風情のある場所は人気で見物客も多いですが、それ以外の街中では比較的ゆったり見物できます。写真は河原町通りを行進する御所車。御所車は2台登場します。最初の京都御苑の写真のものと飾りに違いがあるのがわかるでしょうか?最初のものは藤花の飾り、こちらは桜花の飾りで、行列のしんがりを勤める御所車です。

(5月15日 京都御苑ほか)



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 京都府立植物園でサボテン展が開かれていました。こちらはサボテンとはちょっと違いますが、同じ多肉植物のリトープス。通常サボテンとはサボテン科に含まれる植物のことですが、こちらはハマミズナ科の植物。色といい形といいとても植物とは思えません。お菓子か宝石か人工物のようです。近年、人気があるのもうなずけます。

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 この時期の植物園というとバラ園が花盛り。見た目だけでなく香りも楽しめます。背景は比叡山。

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 巨大な花を咲かせるタイサンボク。
 上のオオバオオヤマレンゲと同じモクレン属の植物。純白の花びらの感じなど合い通じるところもありますが、大きさが圧倒的に違います。同じモクレン属のホオノキにも似ていますが、20cm近い花の大きさにまずびっくり。ゴージャスで開けっ広げな印象です。北アメリカ原産の植物で、ミシシッピ州とルイジアナ州では州花に指定されているようです。

(5月20日 京都府立植物園にて)



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 何の花でしょうか?黄色の鮮やかな花が群生していました。日曜日の川辺には、多くの人が思い思いにくつろいでいました。

(5月20日 鴨川にて)



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 下御霊神社の還幸祭神輿巡幸。
 下御霊神社は京都御苑の南側一体、広大な氏子地域があり、立派なお神輿が広い町内を巡幸し大いに賑わいます。

 日本人の心性を解き明かす上で欠かせない概念が御霊信仰です。Wilepediaから抜粋すれば
「天災や疫病の発生を、怨みを持って死んだり非業の死を遂げた人間の「怨霊」のしわざと見なして畏怖し、これを鎮めて「御霊」とすることにより祟りを免れ、平穏と繁栄を実現しようとする信仰」
となります。先日亡くなられた梅原猛氏なども御霊信仰を重視しておられました。
 そうした御霊信仰の表れ、御霊を祀った神社が上御霊神社と下御霊神社です。早良親王など八人が御霊(八所御霊)として祀られています。御霊としては天神様、菅原道真が有名ですが、御霊神社創建より後の時代となるようです。京都三大祭の一つ祇園祭も元はといえば御霊会がもとになっています。
 平安時代からそうした信仰が顕著になるようですが、現在の日本人にも、敗者、滅び行くものなどに惹かれ、愛着をもったりする心として引き継がれているように思います。その一方で、物事を早急に正義と悪の二項対立的に捉え、一方を排除するのは当然、といった風潮が欧米を中心に強まっていることに大いに危機感を持ちます。

(5月20日 下御霊神社にて)



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 植物園のハナショウブ
 ハナショウブも江戸時代から続く日本の古典園芸植物で多数の品種が知られています。

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 植物園のササユリ
 本当は山に自生しているササユリに会いにいければいいのですが、例年、植物園のササユリで満足しています。

(5月31日 京都府立植物園にて)