例年、愛宕山へクリンソウを見に行くのですが、最近は花が少なくがっかりすることもしばしばでした(リンク)。 そこで今年は別の場所にと考えました。
 クリンソウは京都周辺の山、とりわけ沢沿いには結構普通に見られますが、ある程度群生している場所となると限られます。 比叡山から流れ下る音羽川に生えているのは知っていたのですが、花の時期に訪れたことはありませんでした。 近場なのに盲点でした。
 
 曼殊院の脇の林道から入山、白鳥越えの旧道を登ります(リンク)。 この道は急登ですがよく掘り込まれた素晴らしい道です。 ほどなく掛橋の石鳥居に到着。 ここから林道を進むと音羽川の流れが左手に見えてきます。 川岸に下りてきました。 

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 予想通りというか予想以上の群落が見られました。 時期も丁度よく狙い通りの光景に出会えてにんまりです。 上流に歩いて行くとそこかしこにクリンソウの群落が現れますが、石鳥居からすぐの辺りが一番大きな群落のようです。 
 
 なお、石鳥居より下流、砂防学習ゾーンの間は道がありませんが、古くより知られた音羽の滝などの見所がある初歩的な沢歩きが楽しめます(リンク)。
 
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 クリンソウ、漢字では九輪草と書きます。 九輪とは、五重塔など仏塔の屋根から天に突き出た金属部分(相輪という)の一部、丸い輪が9個連なっている部分をさします。 五智如来と四菩薩をあらわします。 花が層状に積み重なった姿を九輪になぞらえたわけです。
 園芸植物として馴染みのサクラソウの仲間で最大の植物です。

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 湿った所が好みで、渓谷沿いによく見られます。
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 藤の花も見頃。 音羽川には無数の砂防ダムが築かれていて、その上部、ほとんど砂に埋もれた平坦地がクリンソウのよき生育場所になっています。

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 愛宕山のクリンソウ群落は人の手で作られたものでしたが、ここはどうでしょうか? 昔はこんなに無かったような気がします。 比較的アプローチの容易な市街地近郊ということも気になります。 もとから自生していたにせよある程度人の手により作られた群落という気がします。
 
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 雪を纏ったような木が現れました。
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 近づいてみるとヤブデマリでした。 ガクアジサイとよく似た純白の花が木全体に咲き、この時期、山で目立つ花です。 同じガマズミ科の仲間でオオカメノキ(ムシカリ)もよく似た花をつけますが、5枚の花びらが同じの大きさのがオオカメノキ、1枚だけ小さいのがヤブデマリと区別できます。 上の写真でわかるでしょうか? ガクアジサイと同様、周辺の花然とした花は装飾花で、中央のつぶつぶしたのが本当の花です。 この花も全て装飾花となったものが園芸種のオオデマリ。 ガクアジサイと普通のアジサイと同じ関係です。

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 ヤブデマリに気を取られていたら足元にマムシが・・・。 こいつは人が近づいても逃げないため気がつきにくく、知らずに近づくと襲ってくるので注意が必要です。

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 「知恵の輪」
 道なき沢沿いを遡行して行くと巨大な藤の木が現れました。 森を泳ぐ魚のようにも、巨大な目のようにも見えませんか? 幹上には苔がみっしりと花を咲かせていていい感じ。

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 数は少ないですが上流まで点々とクリンソウが見られます。
 その後、林道に上がり源流まで遡り比叡山ドライブウエイにたどり着きました。 一本杉の駐車場から山中方面への踏み跡を下り山中に到着。 ここで戻ればよいものを、欲張って、車道を歩き比叡平を抜け、池の谷薬草園を経て、大文字山頂、火床を経由して銀閣寺に下山しました。 

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 大文字の火床で見つけたキンラン。 昨年、比叡山の近く、御生山(ミアレヤマ)でキンランを見たので(リンク)、今年も同じ御蔭祭り(5月12日)のあと行ったのですがキンランは見つからず、代りにギンランに出会いました。 今年はキンランとは縁がないかと思っていた矢先、こんな近場で出会えて嬉しい誤算です。

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 火床で見つけた山の幸。 ちょっと時期が遅かったのですがワラビが生えていたので頂いてきました。


 音羽川から大文字山と近場の山を結びつけてかなり強引な長距離の歩行となりました。 それが祟ってか、この山行後から腰に変調を来たし、ついにはちょっと動かすのも激痛、ぎっくり腰に至りました。 そして一月以上不自由な生活を余儀なくされたのでした。 皆様もお気をつけください。


(2017年5月15日 歩く)