今回も昨年の写真から生きものたちの肖像です。

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「七彩の輝き」
 蝶のようにひらひらと舞うチョウトンボ。一見黒っぽいですが、止まっている姿にそっと近づいてみれば、艶やかな金属光沢に目を奪われます。

(2016年7月22日 深泥池にて)


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「前科者?」
 鷹ヶ峯付近をぶらついていると民家の前で犬がお昼寝中。注意書きをみると、相当やんちゃらしい。遠くから一枚写真を撮らせてもらい退きます。

(2016年9月7日 鷹ヶ峯にて)


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「ともし火」
 花と同様、つぼみも個性的。秋になると唐突に赤い蕾を突き出してきて、季節の巡りを感じます。

(2016年9月16日 京都御苑にて)


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「絢爛豪華」
 京都松ヶ崎の疎水に白い彼岸花が咲いていました。暗い背景に浮かぶ姿は妖艶な雰囲気を漂わせています。赤と白、色の違いがこうも際立つ花も珍しい。

(2016年9月24日 松ヶ崎疎水にて)


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「小さな軽業師」
 京都御苑の草むらの中でクモの巣が虹色に輝いていました。微細な構造がもたらす回折現象によるものなのでしょう。CDが虹色に輝くのと同じことです。

(2016年9月27日 京都御苑にて)

 ところでクモの糸は絹糸と同様フィブロインというタンパク質から出来ています。フィブロインといってもクモとカイコでは微妙に違い、糸の性質も異なってきます。クモの糸は絹糸などよりはるかに丈夫で、鉄より強くナイロンより収縮性がある夢の素材と云われています。そして、クモの糸をヒトの生活に役立たてようと研究がすすんでいます。問題は、クモに大量の糸を作り出させるのが困難なこと。カイコのように大量に飼育することがまず困難です。そこでクモから糸を取るのではなく、他の生物にクモの糸を作らせることが試みられています。成分がタンパク質なので遺伝子(クモのフィブロイン遺伝子)を他の生物、例えばカイコに導入して、カイコにクモの糸を吐かせようという寸法です。
 こうした遺伝子組換え生物は、食品では安全性や生態系への悪影響などへの抵抗が大きく、日本では一般的ではありませんが、薬品の製造などでは普通に使われています。例えばヒトのインスリンを、遺伝子を組換えたバクテリアに作らせるといった具合です。

 さて、クモの糸の応用例として、その強度に着目して宇宙エレベーターのケーブルが話題に上がっています。宇宙空間に到達するエレベーターを作ってロケットを使わずに宇宙にモノや人を運べるという夢物語です。宇宙を目指す人類の動機は様々でしょうが、地球での生存の将来を危惧して、宇宙に進出するという側面があるのでしょう。なにやら芥川龍之介の蜘蛛の糸を思い浮かべてしまいます(青空文庫へのリンク)。地獄で苦しむ男が天から降りてきた蜘蛛の糸を伝って自分ひとり極楽に逃れようとしますが、その身勝手さゆえ糸が切れて地獄に逆戻り、というお話。
 ところでクモも糸を使って新天地に空を飛んで移動するということをご存知でしょうか? クモにとって糸は獲物を絡めとる巣の素材としてばかりでなく、糸を空中に伸ばし風に乗って自身も飛ばしてもらうのです。時には数千メートルもの高度を飛行するといいます。そして絶海の孤島などにも生息環境を広げるわけです。
 それにしても、生物の能力は計り知れません。絹やクモの糸に限らず、木綿、羊毛などの天然繊維に合成繊維は未だ追いつけません。それも道理、なにせ生物は30億年以上の試行錯誤の末、作られてきたのですから。そして、その歴史をもってしても宇宙への進出はかないませんでした。たかだか数十万年の歴史しか持たない人類が宇宙へ居住地を拡大できると考えるのは自惚れでしかないでしょう。
 宇宙にフロンティアを目指すというと夢がありそうですが、そんな非現実的なことを考えるより、その知恵と資源を、いかに地球を末永く住みよい星にしていくか、という目的に振り向けたほうがよいのではないでしょうか。