最近出合った生きものたちを紹介しましょう。
 今回は虫やカエルなど小さな生きものです。

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 「毛むくじゃらの同居人」
 自室にいたハエトリグモのクローズアップです。ハエトリグモは蜘蛛の仲間で多数の種がいます。普通の蜘蛛のように糸を張った網を作らず、徘徊しながらハエなどを捕食します。家の中など人家性の環境に適応した種もいて、部屋の中で見かけることもよくあります。虫として毛嫌いされる向きもあるかと思いますが、コバエやゴキブリの子供などを捕食してくれる益虫といえます。ごく小さいので見つけても見逃してあげてください。
 なによりハエトリグモ、拡大するとご覧のように非常にチャーミングな面構えをしているのです。なんといっても丸い大きな眼が大小取り混ぜて8個もあります。いったいどのような世界が見えているのでしょうか?

(2016年5月6日撮影)


 トンボ四題

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  「枯杜若に猩猩緋色のブローチ」
 上賀茂にある深泥池で見つけたショウジョウトンボです。住宅街の脇に広がる深泥池はミズゴケで覆われた湿原と池でトンボの楽園でもあります。猩猩は顔の赤い酒好きの想像上の生き物。それから赤色の代名詞として使われます。ショウジョウバエなどもこの発想でつけられた名前です。 
 赤とんぼ とは赤いトンボの総称ですが、一般にはアキアカネに代表されるアカネ属のトンボをさすことが普通です。このショウジョウトンボはより鮮やかな赤色で(雄のみ)ショウジョウトンボ属となります。アキアカネなどは集団で飛びますが、ショウジョウトンボは縄張りを形成し、時々周辺をパトロールして近づく他個体を追い出しまています。同じトンボとはいえ性格、生き様も様々です。

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 「太陽電燈に焦がされて」
 同じく深泥池での撮影です。湖面に反射する太陽を背景にイトトンボがシルエットになりました。丸い太陽がコードの先に光る電燈のように見えませんか?

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 「緑に溶け込んで」
 緑の葉っぱに黄緑色のイトトンボが溶け込んでいます。

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 「タヌキモとイトトンボ」
 タヌキモは水中に茂る見た目普通の水草ですが食虫植物でもあります。そして夏の時期には花茎を水上に伸ばし黄色い花を咲かせます。そのつぼみに止まったイトトンボ。静かな池面が鏡のようです。
 なおイトトンボの類は種類も豊富で同定も難しいので種名まであげていません。

(2016年6月21日撮影 京都深泥池にて)



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 「いのち」
 山の中の水溜りにオタマジャクシが群れていました。水面には小さな花が落ちています。人も立ち入らないイノノシシのヌタ場のような場所にもいのちがあふれていました。

 こうした小さな生き物を見るといつも想像するのは、どんな小さな生き物にもそのすべての個体にお父さんとお母さんがいて、そのお父さんとお母さんにもまた、それぞれにお父さんとお母さんがいて、さらにまたその4匹のおじいさんとおばあさんにも、それぞれお父さんとお母さんがいて・・・・。ずっと命が連鎖しているということです。
 同じことは自分にも当てはまります。自分にも父母がいて、その父母に父母がいて・・・。命の連鎖ははるか過去まで続いています。そして、自分と目の前の小さな命のそれぞれの祖先をどんどん遡っていくと、どれくらい前までいけばいいかはわかりませんが、それでも確実に同じ生き物にたどり着くという事実です。私と植物、私とバクテリアとの間でさえ当てはまります。地球上の生きとし生ける全ての生命が共通する祖先にたどり着き、そこから何億年もの間、その命の連鎖を続けてきて、今この一瞬に再び出会ったという奇跡に感動するのです。姿かたちはまったく違ってしまったけれどお互いよく生き残ってきたなと。 
 生物多様性の重要性が叫ばれています。多くの議論は生物多様性が人類の生存にいかに役に立つかということにあるようです。しかし、生物多様性の重要性の最も根底にあるべきは、生物はみな同根の縁者という事実ではないでしょうか。そうしたことに思いを馳せ、想像できる感性を多くの人が持てればいいと思います。

(2016年5月29日撮影 京都瓜生山にて)

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 「稚ガエル陸へ」
 上とは違う山中の水溜り。近づくと小さな黒い物体がわさわさと逃げていきます。なにものかと、さらに近づくと、尻尾も短くなり歩き始めた稚ガエルが一斉に陸を目指しているのでした。これからどんな運命が待ち構えているのでしょうか。
 おたまじゃくしの類は飼うのは容易でこのくらいまでは育ちますが、この小さなカエルを育てるのは大変です。1cmにも満たないこの小さなカエルが食べられる生餌が必要となるからです。

(2016年5月26日撮影 滋賀県大津市山中町)



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 「ミシシッピアカミミガメ」
 日本にはイシガメ(石亀)とクサガメ(臭亀)といういう在来の亀がいました。ところが最近では写真のミシシッピアカミミガメに席巻されています。名前の通り首の両脇に赤い模様が目立ちます。よくお祭の屋台などで売られているミドリガメというのがこのミシシッピアカミミガメの幼体なのです。名前の通りアメリカ原産、日本にはいなかった亀です。しかしミドリガメとして安易に売られ、そのうち飼いきれなくなり、付近の池などに捨てられ、日本全国に広まってしまったようです。ミドリガメのうちは可愛いのですが、成長すると30cm近くに成長します。繁殖も旺盛で攻撃性も高く、在来の亀類と競合し圧倒してしまったようです。
 ここまで増えてしまうとなかなか駆除は難しい気もします。ところで冒頭にクサガメをイシガメと共に在来種と書きましたが、近年ではクサガメ自体が古くに日本に移入された外来種と考えられているようです。おそらく長い年月を経てイシガメとクサガメも安定した共存関係を築いてきたのでしょう。同じようにミシシッピアカミミガメとも共存する道があればいいのですが。個人的には当然在来のイシガメ贔屓には違いありません。しかし、ミシシッピアカミミガメが悪さをしたわけではありません。人間の都合で異国に連れてこられただけ、むしろ被害者です。異国の地で生き残りをかけて彼らなりに懸命に生きているのです。そして驚いたことに原産国アメリカでは生息地の開発やペットとしての乱獲などで生息数の減少が問題になっているそうです。どうにもうまく行かないものです。

(2016年6月14日撮影 京都御苑九条池にて)