大文字山には幾つかの登路があります。この日は涼を求めて滝のある鹿ケ谷からの道を選択しました。登り口は銀閣寺の南にある霊鑑寺。ここはツバキで有名な門跡寺院で、普段は非公開です。
 川に沿った道を登っていきます。このあたりは鹿ケ谷と呼ばれます。車道の突き当たりには鹿ケ谷山荘という会席料理の店がありましたが、いつの間にか閉店したみたいです。ここから山道となります。今回歩く道は京都一周トレイルの一部で、道標などもしっかりしています。沢沿いに登っていくと滝が見えてきます。これが楼門の滝です。

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 水量は少なく、あまり迫力はありませんが、複数段になって流れ落ちる滝は結構な落差です。一時、暑さを忘れます。上は全景。下は、滝の核心部分。
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 このあたりには滋賀県側にある円城寺(三井寺)の別院、如意寺があったとのことで、石垣、平坦地、石段などが目に付きます。平安時代中期には、こんな山中に、70近い建造物をもつ大伽藍があったとのことです。とても想像できません。
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 楼門の滝付近の石段道。

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 楼門の滝のすぐ上には俊寛僧都忠誠之碑が立っています。時の権力者、平清盛に対する謀反を企てた僧、俊寛が仲間と共に密議を行ったのが、ここ鹿ケ谷にあった山荘だったという。碑ついてはこちら、大意はこちらをどうぞ。

 さらに登っていくと交差路に出ます。ここは大文字山方面、如意ヶ岳方面、山科方面、南禅寺方面と複数の道が交わる結節点です。わずかな距離なので大文字山山頂を往復します。
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 大文字山山頂。京都南部、大阪方面の展望が開けています。

 交差点に戻り、南禅寺方面の道を進みます。この付近には東の池谷地蔵方面からの林道が伸びていたのですが、さらに登山道を横断するように延びていました。何の目的でこんな林道を造っているのでしょうか?そしてどこまで延ばすのでしょうか? 林業のための林道とは思えない、妙に小奇麗な(お金のかかっていそうな)林道に違和感を覚えます。
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 この先は京都一周トレイルとなっている快適な尾根道が続きます。
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 途中で見かけたマツオウジ。1本だけで、乾燥気味ですが頂きました。食べられるキノコを見つけると、つい写真に撮るのを忘れて引っこ抜いてしまいます。このキノコ人によっては軽い中毒症状が出ることもあるようです。ご注意を。

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 途中、山科方面の展望が開けています。

 永観堂や南禅寺方面への分岐がありますが、尾根沿いの京都一周トレイルの道に従っていくと、日向大神宮に行き着きます。
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 ここは京の伊勢とも呼ばれるところで、天照大神を祭った内宮と、外宮に分かれていたり、神明造りの建物、伊勢の遥拝所があったりします。極めつけは天岩戸でしょうか。

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 これが天岩戸。大きな岩にくりぬかれた道があり、通り抜け出来ます。

 日向大神宮を下ると琵琶湖からの疎水に出ます。
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 琵琶湖と京都の間は山であり、疎水も大部分がトンネルとなります。ここが最後のトンネルの出口。
 
琵琶湖から流れてくるのは水だけでなく、水路を通って物資も運ばれました。下の写真はそうした運搬船とそれを運ぶ台車を再現したもの。船を台車に載せ、高度差のある水面間の移動に用いたのが、インクライン(傾斜鉄道)と呼ばれた軌道です。
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一方、水はその落差を駆け下り、蹴上げにある水力発電所のタービンを回したのです。日本で最初の営業用の水力発電所です。
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 明治23年に完成した琵琶湖疏水の設計を任せられたのが、大学を卒業したばかり、弱冠22歳の田辺朔郎だったというから驚きです。

 ここから山沿いに南禅寺まで分流がひかれています。
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 水流は南禅寺に入り橋の上を流れていきます。
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 お寺の境内には違和感のある構造物ですが、これはこれとして年月を経て、趣のある景観を作り出しています。いまや一つの観光名所です。

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 盗賊、石川五右衛門が絶景かな絶景かなと詠った南禅寺の山門。

 南禅寺からは出発点の霊鑑寺まで哲学の道沿いに戻ります。
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 途中の熊野若王子神社。

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 あまりの暑さに猫たちも溶けてしまいそう。愛嬌を振りまく余裕などありません。

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 京大の哲学者、西田幾多郎が思索しながら散歩していたことで有名になった、疎水沿いの、通称、哲学の道。

 京都は北に高く、南に低い緩やかな斜面となっています。よって川は北から南に流れます。しかし、ここ疎水分流は南から北に向かって流れます。水はこの後も洛北のほうに流れていきますが、東山散歩はこれにて終了。お付き合いありがとうございました。 


8月1日歩く。