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ベランダの植木鉢に知らない間に生えてきたこの木、アカメガシワでした。名前の通り先端の若芽の赤がアクセントになっています。成長が早く、水の吸い上げも早いようで、この鉢が真っ先に水不足になり葉がしおれてきます。

注意してみると街中の道路脇や、ちょっとした隙間などにもよく見られます。山でも見かけますが、林道の脇や開けた場所によく見られます。崩壊地や山火事跡など空き地に真っ先に生えてくる先駆植物なのです。種子の状態で20年以上生き続け、裸地となり温度が上昇すると発芽するようです。

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叡電の鉄橋の脇に生えていたアカメガシワ。


アカメガシワ(赤芽柏)、トウダイグサ科の落葉高木。雌雄異株。
トウダイグサ科には毒をもつもの、薬用になるもの、有用植物などを多数含む。例えば、ヒマ(ひまし油および猛毒のリシン)、パラゴムノキ(天然ゴム)、アブラギリ(油脂)、キャッサバ(食用)、ナンキンハゼ(蝋)などはトウダイグサ科です。

アカメガシワも将軍木皮、野梧桐(中国名)と呼ばれ、樹皮を生薬として利用される。胃腸機能調整作用や抗炎症作用があるようです。


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鴨川河川敷に生えるアカメガシワ。樹皮は縦に筋が入る。

伊勢神宮の3つの重要な祭り、6月の月次祭(つきなみ)、神嘗祭(かんなめ)、12月の月次祭には、神饌をミツナガシワという葉の上に供えるが、このミツナガシワとしてアカメガシワの葉が用いられるという。また各地でゴサイバ(御菜葉)、サイモリバ(菜盛葉)などの方言が知られていることも、この葉が食器として用いられれたことを偲ばせます。最も方言名が多い植物でもあるようです。

古名はヒサギ(久木)と呼ばれ、万葉集にも4首登場します。


ぬばたまの 夜の深けぬれば 久木生ふる 清き河原に 千鳥しば鳴く (山部赤人)
 

度会(わたらい)の 大川の辺の 若久木 我が久ならば 妹恋ひむかも (柿本人麻呂)

(度会は伊勢付近のこと)
 

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花をつけるアカメガシワ。

今の時期花を咲かせますが、見過ごしてしまうような地味な花です。現代人には平凡な雑木ですが、古の人にとっては思い入れのある樹木だったのでしょう。

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この木は雌株で雌花です。

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葉の根元には腺点(蜜腺)があり、アリが絶えず群がっています。アリが植物を外敵から守ってくれるといいますが、どれほどの効果があるのでしょうか。