新緑の美しい季節です。
植物の葉は何故緑色なのでしょうか? それは葉っぱが緑の光以外を吸収してしまうからです。吸収されずに反射されるのは緑の光のみ、それで葉っぱは緑色に見えるのです。そして植物は吸収した光を用いて光合成をします。 

光は赤から紫までの目に見える光(可視光)の外側にも連続的に連なっています。紫の外側は紫外光、赤の外側は赤外光です。太陽光にはこうした光も含まれていますが、人は見ることが出来ません。紫外光は日焼けの原因としてその存在を主張します。

じつは葉っぱは赤外光も反射します。よって、もしも赤外光で世界を見れば植物は明るく輝いて見えます。
人には見えない赤外光で撮った写真を赤外線写真といいます。昔は特殊なフィルムが必要で、一般的な撮影法ではありませんでしたが、デジタルカメラにより、赤外線写真を撮ることは比較的容易になりました。

目に見えない光で世界を見るとどう見えるのか?
京都植物園で撮ってきた赤外線写真を紹介します。

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正門から入ってすぐのクスノキの並木道です。
赤外線写真は基本的には色のない世界です。なにせ見えない光ですから色もありません。しかし、ここでは極わずかな赤色光(可視光)も一緒に写しこんでいて、その色をコンピューター上で青色に変換しています。如何に違和感のない幻想的な写真に仕上げるか腕とセンスが問われます。

P5103966sw-001_R葉が赤外光を反射するといいましたが、正確にはクロロフィルという光合成のために光を吸収する色素が近赤外光を反射します。植物によりその反射率も異なり写り具合も異なります。より白く輝いているものほどより強く赤外光を反射していて、より活発に光合成を行っているともいえます。
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赤外線写真の特徴としてスノー効果ということがいわれます。すなわち雪が降り積もった風景のような描写になります。
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近年のデジタル加工技術はすごいものがありますが、赤外線写真の描写を普通のカラー写真からデジタルで作り出すことは不可能です。
葉が白く輝いて描写される原因が緑色だからなのではなく、クロロフィルという物質の性質に根ざしているからです。
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わずかな可視光をあえて青くしていますが、同じ写真をモノクロにしてみました。どちらがいいでしょうか?P5103957sw-002
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P5103954sw-001_R梅林です。
P5103977sw-001_R芝生の大広場。
P5103975sw-001_R針葉樹よりも広葉樹、古い葉よりも新しい葉がより光り輝いていることがわかります。まさしく新緑がより輝いて写ります。
P5103974sw-001_R赤外線写真の効果として擬似夜景効果ということもいわれます。今回の写真は可視光もわずかに含んでいますが、赤外光のみにすると青空は黒く沈み、植物だけが白く浮かび上がる独特の描写が得られます。
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P5103970sw-001_R赤外線写真の特徴として空気中のチリやもやなどの影響を受けにくいということがあります。
風景、それも遠くの山を眺望するとき、通常ではもやって写らないものをくっきり写す効果も期待できます。
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今後、赤外線写真の撮影方法、その後のデジタル処理についても紹介していきたいと思います。