写真に一味付け加えるために様々なフィルター類が使われます。なかでもよく使われるものにPLフィルター(偏光フィルター)と呼ばれるものがあります。とくに風景写真などでは鮮やかな色をもたらすものとして常用する人も多いです。しかしPLフィルターは結構値段が張り、レンズの口径に合わせてフィルターを揃えるのも大変です。

PLフィルターの原理は偏光という性質を利用していて、中身は偏光板と呼ばれるものです。もちろん光学的に精度高く作成されていますので、単なる偏光板そのものではないとは思いますが。 
偏光板自体は理科教材として安く入手可能です。たとえば東急ハンズに行けば10cm角のものが150円ほどで売っています。これはぺらぺらのスモーク色のシートです。

今回は東急ハンズで購入した偏光板を使ってPLフィルターの代用になるかを検証してみましょう。まずは本当にこれが偏光板としての性能を有しているかを確認します。

後にフィルターとして使うために円形に切り出します。ぺらぺらなシートなのではさみで切断できます。サークルカッターを利用すればきれいに円形に切り出せます。保護用の透明シールで覆われていますから切断後にはがして利用します。

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上の写真は2枚の偏光板を一部重ねて白色光源(蛍光灯)の上にのせてみたものです。重なった部分の透過率が違うのがわかると思います。右は左の状態から片方の偏光板を90度回転させて写真を撮ったものです。
光は波の性質があります。普通の光は様々な向きの波が混合していますが、偏光板を通すと特定の方向の波の光(偏光)のみを通す性質 があります。2枚の偏光板が通す光の波の方向が一致していれば光を通しますが、直交させてしまうと光を通さなくなるわけです。

別の方法でも確認してみましょう。身近な製品で偏光を利用したものに液晶モニターがあります。パソコンのモニターや液晶テレビ、携帯、スマホなどで確認できます。下の写真はノートパソコンのモニタの上に円形の偏光板を載せてみたものです。この場合偏光板は一枚ですが2枚の写真で偏光板の向きを90度変えています。液晶モニターが発する光自体が既に偏光となっているので偏光板を通してみると偏光板の向きで光を透過したり、遮断したりします。
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偏光板が想定通りの性質を有しているのが判明したので実際にこれを用いて写真を撮ってみます。
シートをレンズの前に手でかざしてもいいのですが使い勝手が悪いので、光が漏れないよう固定する方法を考えます。このときフィルターが回転できるようにする必要があります。要らなくなったフィルターの枠があればそれを利用すればいいでしょう。ここでは手持ちのステップアップリング(46mm-49mm)とフード(49mm)の間に偏光板を挟んで簡易PLフィルターとして利用しました。ステップアップリングをカメラレンズのフィルター枠にねじ込みそのねじ込み加減を変えることで偏光の効果を調節します。緩めすぎて脱落しないよう注意が必要です。各自、自分のレンズと相談して工夫してください。角型のシートをそのまま使えるようなアクセサリーも売っています。
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PLフィルターの効果として反射光を抑えることがあります。
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この2枚の写真は水を入れた器を上記フィルターをつけて撮影したものです。フィルターを適当な位置に回転させて同じ位置から撮影したものです。フィルターをつけない場合、左のように写りますし、実際の見た目も左のように見えます。しかしフィルターを90度回転させて撮ると水面の反射光が消えてそこの模様がくっきり見えてきます(右)。背景の床の写り具合もまったく違うことがわかると思います。
反射光が偏光になることから、偏光板により反射光のみを減ずることが出来るのです。これは水面ばかりに限りません。

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この写真は北野天満宮で新緑の梅の木を写したものです。写真自体は面白いものではありませんが、左右で緑の葉の写りがまったく違うのがわかると思います。これも自作PLフィルターの効果です。あまり意識しませんが物の色にはそのもの本来の色以外に直射光の照り返しに由来するものがあります。またこうした照り返しは非常に強いので局所的に露出過多を引き起こし正確な色再現が出来なくなります。こうした照り返しも反射光で、PLフィルターで減少させることができます。この効果は新緑や紅葉などの色を鮮やかに映し出すのに絶大な効果を生み出します。PLフィルターが風景撮影の必需品として汎用される理由の一つです。

もう一つ作例を、
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 空の色が左右で違うのわかると思います。実際の見た目は左の写真ですが、PLフィルターを適当に回転させると右のように青空がより濃く、白い雲がくっきりと写っている事がわかると思います。これもPLフィルターの効果です。空の色も空中の微細なチリなどの反射光によって邪魔されています。これをPLフィルターにより除くことができるのです。
ただしこの効果は注意する必要があります。太陽と撮影者の位置関係で効果が変わってくるのです。 太陽が横から当たっているときに最も効果が出ます。よって、(超)広角レンズを利用しているときは画面の中で効果の出方が違ってきてしまい違和感のある絵になってしまうことがあります。上右の写真でもPLフィルターの効果が画面の左側により強く出て青色が濃くなっています。

PLフィルターを使う上で知っておくべきことを書いておきます。
原理上PLフィルターを通すと光量が減少します。通常効果が最も強くなる位置で最も光量が低下します。よって露出を増やす必要があります。上の青空の写真の例でいいますと、左の写真は絞りf10、シャッタースピード1/640秒ですが、右の写真は絞りf8、シャッタースピード1/400秒です。場合によっては手振れなどに注意する必要が出てきます。
ここで紹介したPLフィルターは偏光板を利用した単純なものです。もしも利用しているカメラが一眼レフ、つまりミラーを内蔵したカメラを使っている方には向きません。それは一眼レフでは露出やAFに偏光を利用しているからです。そこで市販されているPLフィルターの多くは円偏光フィルター(C-PLフィルター)と呼ばれるものとなっています。これなら一眼レフでも問題ありません。一方、ミラーレス一眼やコンデジであれば偏光板利用の簡易PLフィルターで問題ありません。 

高価なPLフィルターを買わなくても安価な偏光板を利用することで手軽にPLフィルターの効果を楽しむことが出来ます。もちろん市販のフィルターに比べれば性能は劣るかもしれませんが、実用上充分利用できるものです。興味があるけれど市販のものを買うのはためらわれている方、この簡易PLフィルターでその効果を試してみるのもいいかもしれません。

長くなったので次回に偏光板の他の利用法についても書いておきましょう。